面接リアル

SIer出身がWeb系PM面接で「評価される点」「されない点」

2026-07-06 公開 | 監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

「SIerでPMを10年やってきたのに、Web系の面接では全然響かなかったんです」

この類のご相談は、正直、かなり多いです。しかも相談に来られるのは、決して実力のない方ではありません。大規模案件を何本も完遂してきた、社内では明らかにエース級の方が、Web系プロダクト企業の面接で連敗して自信を失っている——このパターンを、僕は面談の現場で繰り返し見てきました。

結論から言うと、落ちる原因の大半はスキル不足ではなく、語る順番と語る対象のズレだと僕は考えています。SIerで積んだ経験のうち、Web系の面接官が評価する部分と評価しない部分がはっきり分かれているのに、評価されない部分から話してしまう。それだけの話であるケースが本当に多いのです。

0. 前提:面接官は「別の物差し」を持っている

そもそもなぜズレるのか。SIerの社内評価とWeb系面接の評価は、物差しそのものが違うからです。SIerでの評価軸は、突き詰めるとQCD——品質・コスト・納期をいかに守り切るかです。数千万〜数十億円の案件を計画どおり完遂した実績が、そのまま社内の勲章になる。一方、Webプロダクト系PMの評価軸は、継続率・NPS・売上といったリリース後の数字です。同じ「PM」という肩書きでも、まったく違う職種だと僕はnoteでも書いてきました。

身近な例で言うと、野球の名選手がサッカーのトライアウトで「打率3割です」と語っているような状態です。すごいことは伝わるが、採点表に記入する欄がない。まず相手の採点表を知ることが、面接準備のスタートラインです。

1. 評価されない点——「管理の実績」そのもの

誤解がないように申し上げると、管理能力が不要だという意味ではありません。ただ、次のような語り方は、Web系のPM面接ではほとんど加点になりません。

なぜか。Web系プロダクトの世界では、リリースは終わりではなく始まりだからです。納品と検収で完結する語りは、「この人はリリース後の数字に興味がないのでは」という疑念に直結します。要件どおり作る力は、要件そのものをAIが書き始めた時代には、それ単体では差別化になりません。

もう一つ、面接官側の事情も補足しておくと、Web系企業の面接官の多くはSIerの現場を知りません。「50人月」「多重下請けの調整」と言われても、その難しさの解像度がない。伝わらないのは、あなたの実績が軽いからではなく、相手の辞書にない言葉で話しているからです。

2. 評価される点——「意思決定への関与」と「顧客の課題」

逆に、同じ経歴でも次の切り口で語ると、面接官の目の色が変わります。

つまり、面接官が知りたいのは「あなたはプロジェクトを回した人か、それとも意思決定をした人か」の一点です。SIerの現場で意思決定に触れていない人は実は少ない。ただ、それを「管理業務の一部」として記憶しているので、聞かれないと出てこないのです。

2-1. ビフォー・アフターで見る「同じ経験」の語り直し

Before:「金融系基幹システムの刷新プロジェクトで、20名体制・18ヶ月を計画どおり完遂しました」

After:「当初要求は画面の刷新でしたが、業務ヒアリングの結果、本当のボトルネックは何重にも折り重なった承認フローにあると特定し、スコープを組み替える提案をして通しました。削る判断を顧客の役員と直接握ったのが、一番タフな仕事でした」

同じプロジェクトです。ただ、前者は「回した人」、後者は「決めた人」に聞こえる。企業が最後に見ているのは実績そのものではなく、その経験が別の環境でも再現される型になっているか——評価軸は再現性ではなく適用可能性、というのが僕の持論です。

2-2. もう一つの落とし穴——成功モデルの絶対視

もう一段深い話をすると、優秀なSIer PMほど陥りやすい罠があります。自分の成功モデル——「まず要件を固める」「ドキュメントで合意を残す」——を無意識に絶対視してしまい、それが面接で滲み出ることです。面接官は「この人はうちのやり方に適応できるか」を見ていますから、「前職の型が唯一の正解ではないと認識している」ことを、一言でいいので明示的に伝えてください。自分を客体化できている人は、それだけで一段深く見えます。

3. 面接は「選ばれる場」ではなく「課題を一緒に解く始まり」

僕がいつも申し上げているのは、合格を狙うほど面接は遠ざかる、ということです。Web系企業の面接は、その会社のプロダクトの課題を題材に「この人と一緒に議論できるか」を見ています。だから準備すべきは想定問答ではなく、相手のプロダクトを実際に触って、自分ならどこを直すかを考えていくことです。

SIerで鍛えた「顧客の業務を短時間で構造化する力」は、まさにここで活きます。初対面の業界の業務フローを数回のヒアリングで図にしてきた方なら、プロダクトを触って課題仮説を立てることは、実は得意領域のはずです。面接の場で「ユーザーとしてここで離脱しかけました。◯◯の業務文脈を考えると、この導線は△△では」と一つ言えるだけで、面接は試験から議論に変わります。

4. ケーススタディ——「連敗エース」が語りを変えた話

特定されない範囲でぼかしますが、実際の面談のケースを一つ。40代前半、大手SIerで金融系の大型案件を渡り歩いてきた方でした。Web系プロダクト企業を5社受けて、一次面接で5連敗。ご本人の分析は「モダン開発経験がないからだ」でした。

模擬面接をしてみると、原因は別の場所にありました。冒頭の自己紹介の3分間が、案件規模と完遂実績の年表だったのです。「◯億円・◯名体制・納期遵守」が3回繰り返される。面接官のメモが止まるのが目に見えるようでした。そこで、語りの設計を2点だけ変えました。①冒頭を「いちばん誇れる意思決定の話」から始める。②各エピソードの結びを「この経験は御社のプロダクトだと◯◯の場面で使えると思う」で終える。

次の2社で、両方とも一次を通過しました。スキルは1ミリも変わっていません。変わったのは語る順番と、結びの一文だけです。誤解がないように申し上げると、全員がこれで通るという話ではありません。ただ、「スキル不足だと思い込んでいた不通過が、実は語りの設計の問題だった」というケースは、僕の面談経験の中で決して珍しくないのです。

5. 一次・二次・最終で見られている場所は違う

もう一つ、実務的な補足を。Web系の選考は段階ごとに評価の焦点が移ります。ざっくり言うと、一次は「翻訳できるか」——SIerの経験をプロダクトの言葉で語れるか。二次は「一緒に働けるか」——エンジニアやデザイナーとの協働のイメージが湧くか。ここでは「エンジニアにどう動いてもらったか」ではなく「エンジニアの技術的な主張を、事業の判断にどう取り込んだか」を語れると強い。最終は「数字への執着があるか」——リリース後の世界を自分事として語れるか。

つまり、本記事で書いた「課題と意思決定から語る」は一次を突破する話法です。二次以降に向けては、協働の話と数字の話を別途仕込んでおく。段階ごとに弾を変える、という発想自体がプロジェクト計画そのものですから、皆さまなら設計できるはずです。

6. よくいただく質問

Q. 「技術力が足りない」と言われて落ちました。語りの問題ではないのでは?
もちろん、本当に技術理解が必要な席はあります。ただ、お見送り理由の「技術力不足」は、実際には「エンジニアと対話できるイメージが湧かなかった」の言い換えであることが多い、というのが僕の体感値です。実装力を示す必要はなく、「技術的なトレードオフの議論に、事業の言葉で参加できる」ことを一つのエピソードで見せられれば、この理由での不通過はかなり減ります。

Q. 応募前にプロダクトをどこまで触ればいいですか?
無料枠で3日も触れば十分です。大事なのは網羅ではなく、「ユーザーとしてつまずいた場所」を一つ、業務文脈の仮説つきで持っていくこと。10個の浅い感想より、1個の深い仮説です。

Q. 何社くらい受けるのが適正ですか?
語りの設計を変えながら受けるなら、まず2〜3社で反応を検証することをお勧めします。同じ語りのまま10社受けるのは、同じ実験を10回繰り返すのと同じで、得られる学びは1社分です。面接ごとに「どの話で面接官が乗り出したか」を記録して次に反映する——このサイクル自体が、皆さまが現場でやってきた改善そのものです。

(結論) 語る順番を変えるだけで、通過率は変わる

整理します。①相手の採点表(リリース後の数字・意思決定への関与)を知る。②職務経歴書と面接の冒頭を、「規模と完遂」からではなく「課題と意思決定」から始める。管理の実績はその裏付けとして後半に置く。③前職の成功モデルを絶対視していないことを一言添える。④プロダクトを触って課題仮説を持っていく。

順番を入れ替えるだけで、同じ経歴がまったく違って見えます。これは僕の体感値ですが、SIer出身の方の面接不通過のかなりの部分は、この一点で改善余地があります。スキルを積み増す前に、まず語りの設計から。

皆さんいかがでしたでしょうか。自分の経歴のどこが評価される座標なのか知りたい方は、15問診断もご活用ください。では今日もがんばりましょう。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

PM・PM隣接職に特化した人材紹介「PM Quest」を運営。IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等はPM Quest独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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