キャリア戦略

45歳PMがジョブ型雇用で評価される職務定義の書き換え方

この記事の要点
2026-10-29 公開 | 監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト 代表) | 本記事の数値はPM Quest独自ガイドの目安値です

「うちの会社もジョブ型に切り替わって、職務記述書に自分を当てはめろと言われたんです。でも僕、20年いろいろやってきたから、どのジョブにも中途半端に当てはまって、どれにも完全には当てはまらなくて……」。先日、50歳手前・PM歴20年近いという方から、こんな相談を受けました。

これは、ここ数年で急に増えた相談です。ジョブ型雇用という言葉が独り歩きして、なんとなく「成果主義で厳しそう」「若手に有利そう」というイメージが先行している。でも、実際に45歳以上のPMがジョブ型とどう向き合えばいいのかを、具体的に分解した話はあまり見かけません。今日はそこを、僕の体感値で整理してみたいと思います。

0. そもそもジョブ型雇用とは何か

まず結論から言うと、ジョブ型雇用とは「人に仕事をつける」のではなく「仕事(ジョブ)に人をつける」考え方です。従来の日本型(メンバーシップ型)は、まず人を採用して、その人に合わせて仕事を割り振る。ジョブ型は逆で、先に職務記述書(JD=ジョブ・ディスクリプション)で仕事の中身と要件を定義し、そこにハマる人を当てる。

ここで多くの45歳以上の方が誤解するのが、「ジョブ型=年齢に厳しい」という思い込みです。個人的には、これは半分だけ正しくて、半分は逆だと考えています。確かに「何でもやります、どこでも埋めます」という売り方はジョブ型では通用しません。でも、ジョブ型は評価基準が明文化される分、45歳の成果が「若いから」「ベテランだから」という空気に埋もれにくい。曖昧な印象で落とされるメンバーシップ型より、むしろフェアな場面があるんです。

1. なぜ45歳の「何でもできる」が不利になるのか

ジョブ型でベテランがつまずく一番の理由は、経歴の幅の広さが、そのままでは「焦点のなさ」に見えてしまうことです。

1-1. 幅は資産だが、提示の仕方を間違えると弱みに見える

20年PMをやってきた方は、要件定義もやったし、ベンダーコントロールもやったし、保守運用も、チームマネジメントも、なんなら営業同行もやってきた。本人からすれば全部が財産です。ところがJDに照らすと、「要件定義10割の人」と比べたときに、あなたは「要件定義も含めていろいろやった人」に見える。採用側の頭の中で、あなたは特定のジョブの第一人者としてインデックスされないんです。

これは、商品棚に例えると分かりやすい。専門店の棚に「万能調味料」を置いても、客は「だし」が欲しいときは専用のだしを手に取る。万能であることは、特定カテゴリーの第一想起を取れないという意味で、売り場では不利に働くことがある。幅は捨てなくていい。でも、棚に置くときの顔は1つに決める必要があります。

1-2. 「何屋か分からない」問題がジョブ型で顕在化する

この構造は、以前書いた「職歴が長すぎて何屋か分からない」問題を解く整理術とまったく地続きです。メンバーシップ型なら、面接官が「まあ、いろいろできそうな人だ」で通してくれることもあった。ジョブ型はそれを許しません。JDの穴に当てはまるかどうかで判断されるので、幅広さが機能しなくなる。だからこそ、束ね直しが要るんです。

2. 職務記述書に自分を翻訳する手順

では、どう束ね直すか。僕がおすすめしているのは、JDを1行ずつ分解して、自分の経歴を当てはめ直す作業です。

2-1. 要件を分解し、縦・横・斜めで紐づける

まず応募先のJDを、求める要件ごとに箇条書きで分解します。「500名規模の基幹システム刷新をリードした経験」「ベンダー3社以上のマルチベンダー統制」「経営層への報告経験」といった具合に、1行ずつに割る。そのうえで、自分の経歴から対応する実績を、縦・横・斜めの3軸で紐づけていきます。

縦は深さ。何名のチームを、何ヶ月、いくらの予算で回したか。横はカバーした職域の幅。斜めは異業界をまたいだ接続経験。この3軸で経歴を再編集する考え方は経歴は縦・横・斜めで語れで詳しく書きましたが、ジョブ型ではこの翻訳作業がそのまま合否に効きます。

翻訳の対応表を作ると、自分がどのジョブに最もハマるかが可視化されます。

JDの要件自分の対応実績紐づく軸
大規模基幹刷新のリード80名・24ヶ月・予算12億の刷新を完遂(目安値)縦(深さ)
マルチベンダー統制ベンダー4社の進行統制を担当横(幅)
業界知識(金融)製造出身だが金融系2案件を接続斜め(接続)

2-2. 全要件を満たす必要はない

ここで大事なのは、JDの全項目を埋めようとしないことです。誤解がないように申し上げると、採用側も全項目完璧な人が来るとは思っていません。中核の2〜3項目で突出していれば、残りは「キャッチアップ可能」と判断されることが多い。むしろ全部に平均点で当てはめようとすると、またあの「万能調味料」に戻ってしまう。突出させる項目を絞るのが、ジョブ型での勝ち筋だと僕は考えています。

3. ジョブの定義が年収を決める

ジョブ型のもう一つの本質は、年収がジョブの市場価値に連動することです。ここは45歳以上にとって、実はチャンスでもある。

メンバーシップ型では、年齢が上がるほど「給与水準が高いから採りにくい」という空気で一律に下方圧力がかかりがちです。ジョブ型は違う。ジョブの定義が高ければ、年齢に関係なくその水準が提示される。PM Quest独自ガイドの目安値で言うと、同じPMでも「要件定義から経営報告まで持つプライムPM」と「進行管理中心のPM」ではレンジがはっきり変わります。前者に自分を当てはめられれば、45歳でも年収を守れる。

つまり、ジョブ型では「どのジョブに当てはまる自分として提示するか」が、そのまま年収交渉になる。この職域選定の感覚をつかむには、PM職域マップ40パターンで自分がどのジョブに近いかを俯瞰しておくと、JDとの照合が格段に速くなります。PMは40パターン存在する、という前提に立てば、自分を高く定義されたジョブに寄せていく余地が見えてくるはずです。

4. よくある例と、改善後の対比

具体的に、束ね直しの前後を比べてみます。

よくある例(束ね直し前):「PMとして要件定義、設計、ベンダー管理、保守運用、チームマネジメントまで幅広く20年経験してきました」。これはメンバーシップ型なら通っても、ジョブ型のJD照合では「で、このジョブの第一人者なのか?」が伝わらない。

改善後(束ね直し後):「大規模基幹刷新のプライムPMです。直近は80名・24ヶ月規模の刷新を予算内で完遂しました(数字は目安)。設計・ベンダー統制・保守運用まで一気通貫で見られるのが強みで、これは20年の職域の幅があるからこそ提供できる価値です」。

幅を捨てているわけではありません。顔を「プライムPM」という1つのジョブに決めたうえで、幅を「だからこそ一気通貫で見られる」という補強材料に回しているだけです。これが、水平的成長より垂直的成長を優先する、ということの実務的な意味だと僕は考えています。

5. ジョブ型は45歳にとって本当に不利か

ここまで読んで、「結局ジョブ型は厳しいんじゃないか」と感じた方もいるかもしれません。でも、僕の体感値で言うと、束ね直しさえできれば、ジョブ型は45歳にとってむしろ戦いやすい土俵です。

理由は3つあります。1つめは、評価基準が明文化されるので、成果が年齢の印象に埋もれにくいこと。2つめは、ジョブの定義が高ければ年収が年齢で削られにくいこと。3つめは、入社後の立ち上がりでも「このジョブを担う人」として期待値が明確なので、何を出せば信頼されるかが読みやすいこと。この3つめは、転職後の最初の90日で信頼を溶かさないという話ともつながります。

逆に言えば、JDを読まずに「とりあえず応募」を続けると、ジョブ型の土俵では空振りが増えます。SIer出身の方ならPM Quest SI、ITコンサル出身の方ならPM Quest Consulで、業態ごとにどのジョブが評価されやすいかの感覚を掴んでおくと、照合の精度が上がると思います。

(結論)

まとめます。ジョブ型雇用で45歳以上のPMがやるべきことは、幅を捨てることではなく、幅を1本のジョブに束ね直すことです。JDを1行ずつ分解し、縦・横・斜めで自分の経歴を翻訳し、中核2〜3項目で突出させる。顔を1つのジョブに決めたうえで、20年の幅を「だからこそ一気通貫で見られる」という補強に回す。これができれば、評価基準が明文化されるジョブ型は、曖昧な印象で落とされるメンバーシップ型より、むしろ45歳の厚みが正当に効く土俵になります。

つまり、ジョブ型は年齢を削る仕組みではなく、自分を高く定義されたジョブに当てはめる技術が問われる仕組みだ、ということです。固定観念を超越して、「幅が広い自分」から「このジョブの第一人者である自分」へと提示を切り替える。そこに、45歳からの希少価値が立ち上がると僕は考えています。皆さんいかがでしたでしょうか。まずは手元にある気になる求人のJDを1枚、1行ずつ分解してみるところから始めてみてください。

山根一城(株式会社ポテンシャライト 代表)
監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)
PM領域を含むHR支援・キャリア支援に通算4,200名規模で携わる。PM特化の人材紹介「PM Quest」を運営。「PMは40パターン存在する」「経歴は縦・横・斜めで語れ」等の独自フレームを提唱。
PM QUEST

自分の現在地を、3分で確かめる。

「45+市場価値診断」(15問・無料・登録不要)で、現実的に狙える職域タイプが分かります。個別に相談したい方はPM Questへ。

45+市場価値診断を受ける PM Quest で相談する

あわせて読む

全体像

45歳からのPM転職の全体像 — 何から考え、どの順番で動くか

職域マップ

45+のためのPM職域マップ — 40パターンを年齢許容度で読み替える

ホンネ

45歳からのPM転職、年収は本当に下がるのか — 職域別レンジで見る現実

よくある質問

Q. ジョブ型雇用は45歳の転職に不利ですか

結論から言うと、一概に不利とは言えません。ジョブ型は職務記述書で評価基準が明文化されるため、45歳の中途でも成果が年齢に埋もれにくい構造があります。むしろ曖昧なメンバーシップ型のほうが「若手を採りたい」という空気で落とされやすい場面もあります。不利になるのは「何でもできる」を売りにしたときで、ジョブ型では特定のジョブに対する深さが問われます。経歴の幅を1本のジョブに束ね直せば、45歳の厚みは加点に変わると僕は考えています。

Q. 職務記述書にどう自分を当てはめればいいですか

まず求人票のJD(職務記述書)の要件を1行ずつ分解し、自分の経歴から対応する実績を縦・横・斜めで紐づけます。縦は深さ(何名×何ヶ月×予算)、横は職域の幅、斜めは異業界の接続です。要件に対して「この経験が該当する」と翻訳できれば、採用側はあなたを空いたジョブの穴に当てはめやすくなります。全要件を満たす必要はなく、中核2〜3項目で突出していれば十分だと、僕の体感値では感じています。

Q. ジョブ型だと年収は上がりますか

ジョブ型では年収がジョブの市場価値に連動するため、ジョブの定義次第で上がることも下がることもあります。PM Quest独自ガイドの目安値で言うと、同じPMでも「要件定義まで持つプライムPM」と「進行管理中心のPM」ではレンジが変わります。年齢で一律に下がるメンバーシップ型と違い、ジョブ型は自分を高く定義されたジョブに当てはめられれば年収を守りやすい。ここは職域選定の巧拙がそのまま年収に出る領域だと考えています。