職務経歴書

45歳PMの「職歴が長すぎて何屋か分からない」問題を解く整理術

この記事の要点
2026-09-29 公開 | 監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト 代表) | 本記事の数値はPM Quest独自ガイドの目安値です

「経歴書、23年分ぜんぶ書いたんです。プロジェクトも20個以上やってきたので、それを全部載せて……なのに、面接で『結局あなたは何が専門なんですか』って毎回聞かれるんですよ。何が悪いんでしょうね」——先日、こういう相談を受けました。48歳、PM歴も長く、実力は間違いなくある方です。でも、経歴書からその実力が伝わっていない。

これは、45歳以上のPMに本当に多い悩みです。若い頃は「経験が浅い」ことが弱みでしたが、45歳を超えると今度は逆に「経歴が長すぎて何屋か分からない」ことが弱みになる。皮肉な話ですが、これが現実です。

まず結論から言うと、経歴の長さそのものは不利ではありません。不利なのは「何屋か分からない状態」です。今日は、20年超の経歴を持つ皆さまが、自分の軸を1本に絞り込み、採用側が3秒で理解できる肩書きに再編集する方法を、僕の体感値で整理していきます。

0. 「何屋か分からない」とは何が起きているのか

まず用語を定義させてください。僕が社内で「何屋か分からない問題」と呼んでいる現象があります。これは、経歴書を読んだ採用担当者の頭の中に「この人は◯◯の人だ」という一言のラベルが残らない状態を指します。

採用の現場では、書類は一人あたり数十秒〜長くて2〜3分しか見られません。その短い時間で採用側がやっているのは、実は「この人を一言で言うと何屋か」というラベル貼りです。SIerのプライムでインフラを回してきた人。Web系で決済まわりを長くやってきた人。組み込みで品質保証に強い人。こういうラベルが立てば、次に「うちの案件に合うか」を判断できる。

ところが経歴が20年を超え、業態も職域もフェーズも横断していると、このラベルが立たない。「いろいろやってきた人」で終わってしまう。誤解がないように申し上げると、これは皆さまの実力が足りないのではなく、伝え方が実力に追いついていないだけです。ここは切り分けて考えてください。

1. なぜ経歴が長いほどラベルが立たなくなるのか

構造はシンプルです。経歴が長い人ほど、無意識に「全部を均等に見せよう」としてしまうからです。23年やってきたなら23年分、20プロジェクトやったなら20個、漏れなく載せたくなる。頑張ってきた自負があるほど、そうなります。

でも、均等に並べた瞬間に軸が消えます。読み手からすると、10年前のSIer時代の話と、直近のWeb系の話が同じ重みで並んでいると、「今この人が何をやっている人なのか」が分からなくなる。全部が主役だと、主役がいないのと同じなんですね。

身近な比喩で言うと、これは冷蔵庫の中身を全部テーブルに出したような状態です。食材は豊富にある。でも「今日、何が食べられるのか」は分からない。採用側が知りたいのは在庫一覧ではなく「今すぐ出せる一皿」なんです。

この「職種が溶ける」感覚は、経験豊富なベテランほど陥りやすい。だからこそ、意図的に軸を立て直す作業が必要になります。

2. 何屋かは「業態×職域×得意フェーズ」の3つの掛け算で決まる

では、何屋かはどう決めるのか。僕は3つの掛け算で決まると考えています。

2-1. 業態(どの世界のPMか)

SIerなのか、Web系なのか、組み込みなのか、事業会社の情シスなのか。同じPMでも業態が違えば別の生き物です。この業態ごとの年齢許容度の違いは業態別・45+の許容度の考え方で詳しく整理していますが、まず自分の主戦場となる業態を1つ、はっきり名乗る必要があります。

2-2. 職域(PMの40パターンのどこか)

PMと一口に言っても、僕の整理では40パターン存在します。要件定義に強いPM、大規模開発の進行管理に強いPM、PMOとして横串を通すのが得意なPM、火消し専門のPM。全部PMですが、求められるものは全然違う。自分がどのパターンなのかはPM職域マップで位置を確認すると腹落ちしやすいです。

2-3. 得意フェーズ(どの局面で光るか)

これが抜けがちなんですが、実は一番効きます。立ち上げの0→1が得意なのか、走っている案件の1→10が得意なのか、炎上した現場を鎮める10→立て直しが得意なのか。フェーズが明確な人は、採用側が「うちの今の局面に合うか」を判断しやすい。

この3つを掛け合わせると、たとえば「Web系×決済まわりの進行管理×火消しフェーズ」といった一言のラベルが立ちます。3つ揃うと、それだけで100人に1人の希少価値になる。1つや2つでは埋もれますが、3つの掛け算にした瞬間に景色が変わります。

3. 直近5〜7年を主軸に、残りを「補助線」に格下げする

ここが実務のコアです。20年超の経歴をどう扱うか。答えは「全部を主役にしない」こと。

具体的には、直近5〜7年を主軸に据えます。この期間の業態×職域×フェーズが、今のあなたの「何屋か」です。そして、それより前の経歴は消すのではなく「補助線」に格下げする。補助線というのは、主軸を補強するために引く線のことです。

たとえば直近がWeb系のPMで、10年前がSIerだったとします。SIer時代を主役として長々書くと軸がぶれますが、「大規模SIで培った要件定義の型を、Web系の高速開発に持ち込んでいる」と一行で補助線として引くと、むしろ主軸が強くなる。過去は捨てるのではなく、今を説明する材料に変換するわけです。

よくある例と改善後を並べてみます。よくある例は、2000年入社の一社目から時系列で全部フル解説していくパターン。読み手は3社目あたりで力尽きます。改善後は、冒頭に「Web系決済領域の進行管理を主軸とするPM。前半のSIer13年は要件定義とベンダーコントロールの土台」と3行で要約を置き、詳細は直近を厚く、過去を薄く書く。同じ事実でも、後者は3秒で何屋か伝わります。

この「縦・横・斜めで語る」再編集の順番については、経歴を軸で組み直す考え方として整理してあります。過去の異業種経験を「斜め」の武器に変える発想も、この補助線の考え方と地続きです。

4. 「絞ると応募先が減る」という恐怖の正体

ここまで話すと、必ずこう言われます。「軸を1本に絞ったら、応募できる求人が減るじゃないですか」。気持ちはよく分かります。

でも、僕の体感値で言うと、これは半分は誤解です。何屋か曖昧な経歴書は「全方位に応募できるが、どれにも本命に見えない」状態です。間口は広いが、どの求人でも二番手三番手の扱いになる。一方、軸を1本に絞ると応募母数は確かに減ります。ですが、その1本に対する説得力が跳ね上がり、通過率が上がる。

45歳以降のキャリアは、母数を撃つ戦い方から、通過率を取る戦い方に切り替えるべきだと考えています。若い頃は数を撃てば当たりましたが、この年齢になると数を撃つほど「またこの人か」と埋もれる。1本に絞って深く刺す方が、結果的に速い。水平的成長より垂直的成長、という僕の看板フレーズは、まさにこの話です。

誤解がないように付け加えると、絞るというのは可能性を捨てることではありません。主軸を1本立てた上で、補助線として他の可能性を添えておく。本命の職域で戦いながら、隣接領域も匂わせる。この二段構えが現実的です。

5. 自分の軸が分からないときの見つけ方

「そもそも自分の軸が何か分からない」という方も多いです。長くやってきたからこそ、自分では当たり前すぎて強みに気づけない。これはベテランあるあるです。

そういうときは、3つの問いを自分に投げてみてください。ひとつ、この20年で「これは自分に相談が来る」と言えるテーマは何か。ふたつ、複数の現場で繰り返し感謝された動きは何か。みっつ、他の人が嫌がるのに自分は苦にならなかった局面はどこか。この3つの答えの重なりに、あなたの軸が眠っていることが多いです。

それでも見えないときは、他人の目を借りるのが早い。自分の当たり前は他人の非凡だったりするので、キャリアの棚卸しを一度外から診てもらうのは有効です。PMキャリア診断のような形で自分の位置を客観的に確認してから、経歴書の軸を立て直すと、独りで悩むより格段に速く進みます。固定観念を超越するには、いったん自分の外に出る必要があるんですね。

6. 面接で「何屋か」を1文で答えられるようにする

経歴書で軸を立てたら、最後は口頭です。面接の冒頭、「簡単に自己紹介を」と言われた瞬間が勝負どころ。ここで3分間、時系列で全部話し始めると、序盤で述べた「何屋か分からない問題」が面接でも再発します。

目指すのは、最初の一文で何屋かを言い切ること。「Web系の決済領域で、火消しフェーズの進行管理を得意とするPMです。前半のSIer13年で要件定義の型を作りました」——このくらい圧縮して、まず結論を置く。詳細は聞かれてから足せばいい。年齢を強みに変える受け答えの型は面接対策ロードマップでも触れていますが、根っこは同じで「先に結論、あとで補助線」です。

この一文が言えるかどうかで、面接官が持つ第一印象がまるで変わります。冒頭で「あ、◯◯の人ね」とラベルが立てば、その後の質問はそのラベルを確認する方向に流れる。逆に冒頭が散漫だと、面接官はずっと「で、結局何屋なの」を探り続け、あなたは守勢に回ります。

(結論)

まとめます。45歳以上のPMが直面する「経歴が長すぎて何屋か分からない」問題は、実力の問題ではなく、伝え方の問題です。20年分を均等に見せた瞬間に軸が消え、器用貧乏に見える。ここが落とし穴です。

解き方は、業態×職域×得意フェーズの3つの掛け算で自分の「何屋か」を1本に定め、直近5〜7年を主軸に、それ以前を補助線に格下げすること。絞ると応募先が減る恐怖は半分は誤解で、45歳以降は母数より通過率を取るべき局面です。つまり、長い経歴は捨てるのではなく、今の自分を説明する材料に組み直す。それができれば、20年超のキャリアは弱みから最大の武器に変わります。

皆さんいかがでしたでしょうか。もし今、自分の経歴書が「いろいろやってきた人」で止まっていると感じたら、まずは直近5〜7年だけを取り出して、業態・職域・フェーズの3語で一言のラベルを書いてみてください。そこがあなたの軸の出発点です。

山根一城(株式会社ポテンシャライト 代表)
監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)
PM領域を含むHR支援・キャリア支援に通算4,200名規模で携わる。PM特化の人材紹介「PM Quest」を運営。「PMは40パターン存在する」「経歴は縦・横・斜めで語れ」等の独自フレームを提唱。
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よくある質問

Q. 経歴が長いと転職に不利ですか

結論から言うと、長さ自体は不利ではなく「何屋か分からない状態」が不利です。20年分を均等に並べると採用側は軸を掴めず、器用貧乏に見えます。僕の体感値では、直近5〜7年を主軸に据えて残りを補助線に格下げし、業態×職域×得意フェーズの3点を1本に絞るだけで、同じ経歴でも通過率が変わります。長さは強みに変えられます。

Q. 複数業界を経験しているのは強みになりますか

個人的には、接続の物語があれば強みになります。ただし業界をバラバラに並べただけでは「腰が定まらない人」に見えます。異業界経験は縦・横・斜めの「斜め」に当たり、前の業界の知見が今の職域にどう効くかを1本の線でつなげたときに初めて希少価値になります。つなげ方はこの記事で整理しました。

Q. 何屋かを絞ると応募できる求人が減りませんか

減るように見えて、実は通る求人が増えます。何屋か曖昧な経歴書は「全方位に応募できるが、どれも本命に見えない」状態です。軸を1本に絞ると応募母数は減りますが、その1本に対する説得力が上がり、書類通過率が上がります。母数より通過率を取るのが45歳以降の現実的な戦い方だと考えています。