業態別

業態別・45+の許容度 — SIer/Web/組み込み/AIでこれだけ違う

この記事の要点
2026-07-06 公開 | 監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト 代表) | 本記事の職域別数値はPM Career Guide/PM Questが整理した目安値です

「PMの求人なら、どこでも応募していいですよね?」

結論から言うと、良くないです。同じ「PM」と書いてある求人でも、業態が違えば評価軸が根本的に違う。45歳の書類が歓迎される業態と、開封すらされにくい業態があります。身近な比喩で言うと、同じ「料理人」でも、和食の板場とフレンチの厨房では評価される腕が全く違うのと同じです。包丁が使えることは共通でも、何を「上手い」と呼ぶかが違う。

僕はPM特化の人材紹介の中で、業態ごとに評価項目を分けて候補者のキャリアを見ています。今回はその中から4つの業態を取り上げて、「その業態は45歳の何を見ているのか」まで踏み込んで整理します。

0. 「業態で評価軸が変わる」とはどういうことか

そもそもなぜ業態で評価が変わるのか。答えは単純で、商売の構造が違うからです。受託で成果物に責任を持つ会社と、自社プロダクトの継続率で食べている会社では、PMに任せたい仕事が違います。任せたい仕事が違えば、職務経歴書のどの行に目が留まるかも違う。「PM経験15年」という同じ事実が、業態Aでは金貨に、業態Bでは石ころに見える——大げさではなく、それくらいの差が出ます。だから「PMの求人に片っ端から応募する」のは、レートの合わない両替所に並び続けるようなものなのです。

1. SIer系 — 45+に最も広く開いている

発注者側(情シス・ユーザー系SI)と受託側(元請け〜2次請け)を含むこの業態は、年齢許容◎が最も多いゾーンです。評価軸は規模の実績と統制の経験。何名・何ヶ月・予算いくらが語れれば、50代でも書類は通ります。1.5次請けは求人数も多く、45+の現実的な主戦場です。

1-1. SIer系が見ている3つの変数

この業態の面接で必ず出てくるのは、①商流(元請けか、1.5次か、2次以降か——上流ほど希少に見られます)、②契約形態(成果物責任を負う受託か、労働力提供のSESか)、③規模(人数は1名から30名超まで、予算は100万円から3億円超まで、どの箱を経験したか)です。逆に言えば、この3変数を職務経歴書の冒頭で言い切ってしまえば、それだけで「分かっている人」の書類になります。

1-2. 注意点

ウォーターフォール文化が中心なので、ここからスタートアップに移る場合は文化ギャップが大きい、という点は申し添えておきます。逆にSIer系の中で商流を上げる転職(2次→1.5次→プライム)は、同じ実務のまま年収の天井を上げられる、45+と相性の良い動き方です。

2. Web系 — 制作起点なら○、プロダクト企業は△

Web系は一枚岩ではありません。制作・受託起点(総合Webインテグレーター等)は年齢許容◎で、SIer経験者が転換しやすい入り口です。一方、自社プロダクト起点(アプリ・ホリゾンタルSaaS)は△。エンジニア文化が強く、技術理解がないと書類で落ちます。

プロダクト企業が見ているのは、規模や商流ではなく「意思決定にどこまで関与したか」です。進行管理だけをしていたのか、仕様の確定に関与したのか、優先順位とスコープを決めていたのか、プロダクトそのものの方向を決めていたのか。関与レベルが一段上がるごとに評価が変わる世界で、ここは正確に自己申告するほど信頼されます。中間の狙い目がバーティカルSaaS(○)で、業界知識が武器になるぶん45+に相性が良い職域です。同じ「Web系PM」の求人票でも、制作起点とプロダクト起点は別の職種だと思って読み分けてください。

実際の面談でも、この読み分けができていなかったケースをよく見ます。SIerで15年やってきた方が「Webの自社サービスに憧れて」ホリゾンタルSaaSばかり受けて連敗し、疲れ切った頃に総合Webインテグレーターの求人をお見せしたら、「こんな入り口があったんですか」と驚かれる。求人票の「Web系PM」という5文字の裏にある業態構造は、外からは本当に見えにくいのです。見えていれば避けられる連敗は、避けていい連敗です。

3. 組み込み・ハードウェア系 — 年齢がハンデにならない

老舗製造メーカー、組み込み・制御系はほぼ全域が◎。品質・安全の世界では経験年数そのものが信用であり、45歳は「ちょうど良い」年齢ですらあります。評価軸は品質基準への適合経験と、ハード×ソフトの両面理解。年収レンジの天井は900万円前後とIT系よりやや控えめですが、長く働ける安定性は随一です。機械・電気のバックグラウンドを持つ方は、まずここを見るべきだと考えています。求人の絶対数が多くないので、出会ったときに動ける準備だけはしておく、という付き合い方が良いと思います。

4. AI系 — 3層構造で読む。45+の扉は「使う側」にある

AI系は3層に分かれます。①AIを作る側(基盤AI企業・研究特化)は求人がほぼ無く、45+には実質閉じています。②AIを使って作る側(AIソリューション・生成AIプロダクト・AI付きSaaS)は○が中心で、SaaSやPMの経験があれば転換可能。③AIを使って支援する側(新興ITコンサル◎・AIインテグレーター◎)が、45+に一番開いている扉です。

4-1. AI業態は「AIとの距離」を段階で聞いてくる

この業態の面接で特徴的なのは、AI活用のレベルを段階で確認してくることです。資料作成に補助的に使っている段階か、要件や設計の議論にAIを前提として組み込んでいる段階か、プロンプトや簡易エージェントを自作してプロトタイプまで作れる段階か。評価されるのは研究歴ではなく「AIで業務をどう変えたか」の実例です。社内の小さな自動化でも、着手前と後の工数を定量で語れれば実績になります。45歳×生成AI活用は、僕の体感値ではまだ競合が薄い掛け算です。

5. 実務編:業態が変われば、職務経歴書も「翻訳」する

ここまでを実務に落とすと、「職務経歴書は1通ではなく、業態別に翻訳する」という結論になります。翻訳と言っても全部書き直すわけではありません。冒頭サマリー3行と、代表プロジェクトの見せ場の順番を入れ替えるだけです。

同じ経歴の、どの面を最初に見せるかの違いです。面接でも同じで、業態ごとに最初の3分で話す内容を変える。これをやるだけで、「うちの業界を分かっている人だ」という初期評価が得られます。逆に、SIer向けの書類をそのままプロダクト企業に出すと、中身がどれだけ重くても「文脈の読めない人」に見えてしまう。もったいない失敗です。

5-1. 面接で聞かれることも業態で予習できる

ついでに言うと、面接の頻出質問も業態でほぼ決まっています。SIer系なら「最大規模の案件の人数・予算・商流は?」、プロダクト系なら「仕様の最終決定は誰がしていましたか?」、組み込み系なら「品質基準・安全規格との付き合いは?」、AI系なら「直近でAIを使って何を変えましたか?」。つまり業態を絞った時点で、面接の予習範囲も絞れるのです。「どこでも受ける」戦略が非効率なのは、書類だけでなく面接準備でも同じ、ということです。

6. 業態を跨ぐなら「2ステップ」で設計する

ここまで読んで、「自分が行きたいのは△の業態なんだ」という方もいらっしゃると思います。その気持ちは否定しません。僕がお伝えしたいのは、直行便ではなく乗り継ぎ便で行くという設計です。

たとえばSES常駐のPMが自社Webプロダクト企業(△)に直接応募しても、書類はなかなか開きません。ですが、①まず総合WebインテグレーターやバーティカルsaaSといった「両方の言葉が通じる中間の業態」(◎〜○)に移り、②そこでモダンな開発文化と意思決定関与の実績を2〜3年積んでから本命に向かう。この2ステップなら、2度目の書類には「プロダクト開発の文脈で語れる実績」が載っています。45歳スタートでも、47〜48歳での2度目の転職は、1度目より確実に楽になる——キャリアの複利です。

誤解がないように申し上げると、遠回りを推奨しているのではありません。直行便が存在しない路線がある、という市場の事実の話です。行き先を諦めるか、乗り継ぎを設計するか。二択なら、僕は後者を選びます。中間の業態をどこに取るかは、まさに業態ごとの評価軸の重なりで決まるので、この記事の4業態の整理をそのまま乗り継ぎ表として使ってください。

(結論) 業態は「選ぶ」もの

つまり、45+にとって業態は成り行きで決まるものではなく、選ぶものです。統制の実績があるならSIer系、業界知識があるなら組み込みかバーティカルSaaS、生成AIを使い込んでいるならAI系の③。そして応募の前に、その業態の評価軸に合わせて経歴の見せ場を並べ替える。同じ経歴でも、どの両替所に持ち込むかでレートが変わります。ご自身がどこに寄っているかは45+市場価値診断でタイプ判定できます。職種で選ばず、構造で選ぶ。ここが45+の分かれ道だと、僕は考えています。皆さんいかがでしたでしょうか。

本記事の内定難易度・年収レンジ・年齢許容度・求人量は、PM Career Guide/PM Questの整理に基づく目安値です。個別の求人・企業により実際は変動します。統計的な調査値ではない点、ご認識ください。
山根一城(株式会社ポテンシャライト 代表)
監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)
PM領域を含むHR支援・キャリア支援に通算4,200名規模で携わる。PM特化の人材紹介「PM Quest」を運営。「PMは40パターン存在する」「経歴は縦・横・斜めで語れ」等の独自フレームを提唱。
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よくある質問

Q. PMの求人はどこでも応募していい?

良くありません。同じ「PM」でも業態が違えば評価軸が根本的に違うためです。SIer系は商流・規模・統制の実績、Web系プロダクト企業は意思決定への関与レベル、組み込み系は品質基準への適合と経験年数、AI系はAIで業務をどう変えたかの実例を見ています。片っ端から応募するのはレートの合わない両替所に並ぶようなもので、書類も面接準備も非効率です。行きたい業態の評価軸に合わせて経歴の見せ場を並べ替えることが重要です。

Q. 45歳でも年齢がハンデにならない業態は?

組み込み・ハードウェア系はほぼ全域が年齢許容◎で、45歳は「ちょうど良い」年齢ですらあります。品質・安全の世界では経験年数そのものが信用になるためです。年収レンジの天井は900万円前後とIT系よりやや控えめですが、長く働ける安定性は随一です。ただし求人の絶対数は多くないため、出会ったときに動ける準備をしておく付き合い方が良いとされています。機械・電気のバックグラウンドを持つ方はまずここを見るべきです。

Q. 行きたい業態に直接応募して書類が通らない場合は?

直行便ではなく乗り継ぎ便で設計するのが有効です。たとえばSES常駐PMが自社Webプロダクト企業(△)に直接応募しても書類は開きにくいですが、まず両方の言葉が通じる中間業態(総合WebインテグレーターやバーティカルSaaS)に移り、そこでモダンな開発文化と意思決定関与の実績を2〜3年積んでから本命に向かう2ステップなら、2度目の書類に文脈ある実績が載ります。45歳スタートでも47〜48歳での2度目の転職は楽になる、キャリアの複利です。