監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト代表取締役CEO / 業界20年)
DX推進とは、デジタル技術を使って業務プロセスや事業のあり方そのものを見直し、組織の価値提供を作り替えていく一連の取り組みを指します。単なるツール導入やペーパーレス化にとどまらず、業務の流れ・役割分担・評価の基準まで含めて設計し直す点が特徴です。プロジェクトマネージャーにとっては、関係者を巻き込みながら段階的に進める調整の場面が多い領域だといえます。
DX推進という言葉は幅広く使われますが、中心にあるのは「デジタル前提で仕事の仕組みを組み直す」という考え方です。既存の紙やExcelの作業を電子化するだけの取り組みは、デジタイゼーション(電子化)やデジタライゼーション(業務のデジタル化)と呼び分けられることが多く、DXはそのさらに先、事業モデルや顧客への価値提供の形を変える段階を指すと整理されます。
目的の軸で見ると、DX推進は主に三つの狙いを持つと整理できます。
プロジェクトマネージャーが関わる場合、この三つのどこに軸足を置くのかを最初に握っておくと、後の優先順位づけがぶれにくくなります。効率化のつもりで始めた取り組みが、途中で新規事業の議論とすり替わって迷走する場面は珍しくありません。
DX推進の進め方は組織によって異なりますが、大まかな順序には共通点があります。ここでは典型的な流れを、誰が何を担うのかとあわせて整理します。
プロジェクトマネージャーの主な役割は、この流れ全体で関係者の合意を取り、遅れや手戻りを早めに拾うことです。特に業務側とシステム側の言葉が食い違う場面では、双方の橋渡しが求められます。定着の段階を軽く見て導入で区切りをつけてしまうと、旧来のやり方に戻ってしまうことがあります。
DX推進でつまずきやすい点は、技術そのものより人や進め方に関わるものが多いとされています。代表的な形をいくつか挙げます。
プロジェクトマネージャーとしては、着手前に目的と評価の基準を関係者と言葉にしておくことが、こうしたつまずきを避ける助けになります。小さく始めて効果を確かめ、次の範囲へ広げる進め方をとると、途中の軌道修正がしやすくなります。
DX推進は関連する言葉と混同されやすいため、軸を決めて違いを押さえておくと役立ちます。ここでは「対象の広さ」と「主眼」で整理します。
プロジェクトマネージャーが関わる際は、目の前の依頼が「一つのシステム導入」なのか「継続的な変革活動の一部」なのかを見極めると、必要な体制や期間の見立てが立てやすくなります。前者のつもりで請けたものが後者だった場合、想定した範囲を超えて調整が続くことになります。
DX推進の経験は、プロジェクトマネージャーのキャリアで説明しやすい強みになりやすい領域です。業務側とシステム側をつなぎ、関係者の合意を取りながら段階的に物事を進めた経験は、業種を問わず求められる調整力として語れます。転職を検討する際は、「どのツールを入れたか」よりも「どんな課題を、誰と、どの順で解いたか」を具体的に整理しておくと、担った役割が伝わりやすくなります。特に、現場の巻き込みや定着まで見届けた経験は、導入だけで終わった経験と差がつきやすい部分です。自分がプロジェクトのどの工程に強みを持つのかを棚卸ししておくと、次のポジションを選ぶ際の判断材料になります。
DX推進とIT化は何が違いますか?
IT化は既存の業務を効率化する手段を指すことが多いのに対し、DX推進は業務プロセスや事業のあり方そのものを見直し、デジタルを前提に価値提供の形を作り替える取り組みを指します。IT化はDX推進の一部として含まれる場合もあり、両者は対立する概念ではありません。
DX推進でプロジェクトマネージャーは何をしますか?
現状把握から要件定義、導入、定着までの流れ全体で、関係者の合意形成と進捗の管理を担うことが多いです。特に業務側とシステム側の言葉の食い違いを橋渡しし、遅れや手戻りを早めに拾う役割が期待されます。ツール選定だけでなく、現場が新しい流れで動けるようにする調整も含まれます。
DX推進はなぜ失敗しやすいと言われるのですか?
技術よりも進め方や人に関わる要因が大きいとされます。ツール導入が目的化する、現場を巻き込めない、範囲を広げすぎる、効果測定を設計し忘れる、といった形が代表的です。着手前に目的と評価の基準を関係者と言葉にしておくことが、つまずきを避ける助けになります。