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PM QUEST データ研究室 2026-10-15

PM転職市場は冷えたのか? 求人倍率1.18倍・年収中央値900万円の横ばいの裏で入れ替わる「求人の中身」

「山根さん、最近PMの転職市場って冷えてきているんですか? 年収も下がっていると聞いたのですが…」

ここ最近、面談でこの類のご質問をいただくことが割と多いです。前週比の数字だけを追っていると、そう感じるのも無理はないと思います。

そこで今回は3つのデータを並べて、今のPM転職市場で起きていることを整理してみます。公的統計、当社の取扱求人の匿名集計、PM Questの週次定点観測です(2026年10月5日更新・2026-W41時点)。

結論から言うと、市場は「冷えた」のではありません。量と年収は横ばいのまま、求人票が求める中身がAIの側に寄ってきていると個人的には捉えています。

0. 本記事で扱う数字の定義

数字の主語を取り違えると、解釈がまるごとズレます。なので最初に「誰の・何の数字か」と「何と比べるか」を置いておきます。

指標何の数字か(母集合)最新値比較の相手
有効求人倍率全国・全職種の季節調整値(厚生労働省「一般職業紹介状況」)1.18倍(2026年8月)前月±0.00/13ヶ月前は1.21倍
提示年収の中央値当社の取扱PM求人に提示された年収の中央値900万円(W41)前週912万円/13週前も900万円
45歳以上も応募可の割合当社の取扱求人のうち、年齢条件が明記された求人に占める割合97.3%前回から横ばい
PM検索接触指数PM関連の検索で当社メディアに接触した量。直近13週の平均を100とした指数76(W39)前週89
有効求人倍率だけは「全国・全職種」の数字で、PMに限った倍率ではありません。それ以外はすべて当社の取扱求人か、当社メディアの数字です。

なお、今回のデータには隣接職種や他国と比べられる数字はありません。比較は過去時点との比較と業態間の比較に絞ります。

1. 求人倍率は本当に下がっているのか?

一般には「求人倍率が下がった=転職しにくくなった」と語られがちです。ただ、時間軸を引き伸ばすと見え方が変わります。

時点有効求人倍率(全国・全職種・季調値)
2025年8月1.21倍(13ヶ月の最高)
2025年12月1.20倍
2026年1月1.18倍
2026年5月1.17倍(13ヶ月の最低)
2026年8月1.18倍(前月±0.00)

13ヶ月での変化は−0.03ポイントです。年明け以降は1.17〜1.19倍の幅に収まっています。「下落」というより「緩やかに下げたあとの横ばい」と表現するほうが、実態に近いと考えています。

もう一つ、対比で見ていただきたい数字があります。

有効求人倍率新規求人倍率
1.18倍2.06倍
前月から繰り越された求人・求職者も含む「ストック」の比率その月に新しく出た求人と、新しく仕事を探し始めた人の「フロー」の比率
全国では、新しく出てくる求人が、新しく仕事を探し始める人の約2倍あります。日本の労働市場全体が「求人がない」状態にあるわけではありません。

誤解がないように申し上げると、これは全職種の話です。PMに限った需給が同じ形をしているかどうかは、このデータからは言えません。あくまで「市場全体の温度」を示す背景データとしてお読みください。

2. 年収中央値900万円は「下がった」のか?

当社の取扱PM求人の提示年収の中央値は、前週から−12万円の900万円でした。見出しだけ見ると下落です。ただ、13週を並べると話が変わります。

週提示年収の中央値
W29〜W32900万円
W33〜W35912万円
W36〜W37913万円
W38925万円(13週の最高)
W39〜W40912万円
W41900万円

13週の振れ幅は900〜925万円です。今週の900万円は、13週前のW29とまったく同じ水準に戻っただけです。

年収は下がったのではなく、900万円台前半の帯の中で揺れている状態です。トレンドが変わったと言える材料は、まだデータにありません。

あわせて、各求人の年収レンジを見ると、下限の中央値は678万円、上限の中央値は1124万円でした。典型的なPM求人の提示レンジひとつの中に、400万円以上の幅があるということです。

ここからは解釈です。同じ求人でも、どこに着地するかは面接での伝わり方で動く余地が大きいと僕は考えています。なので「市場が冷えているなら希望年収を下げよう」という発想は、データからは支持されません。それよりも、次の順番で準備しておくことをおすすめします。

  1. 位置を決める:応募先のレンジのどのあたりに自分を置くかを1つ決める
  2. 根拠を用意する:その位置の理由を、担ったプロジェクトの規模・範囲・関係者の広さで語れるようにする
  3. 最初から下げない:調整するのは、面接の中で根拠が崩れたと感じたときだけ

3. 年収を分けるのは「業態」×「選考の要求水準」

では、その幅は何で分かれるのか。当社に蓄積された選考記録から見た、業態別の目安を並べます。難易度は当社による5段階評価です。

業態年収目安選考難易度特徴
AI・データ系800-1300万円5急成長中だが要求水準が最も高い
ITコンサル800-1200万円4論理面接のハードルが高い。年収は最高水準
Webプロダクト700-1000万円4志向性の証明が必要。カルチャー選考が厚い
SIer・受託開発650-900万円2求人数は最多。経験の型が合えば通りやすい
社内SE・情シスPM600-850万円245歳以上に最も門戸が広い
年収目安の上限が中央値の900万円を超えるのは、難易度4〜5の3業態だけです。難易度2の2業態は、上限が900万円以下に収まっています。

何を申し上げたいかと言うと、900万円という中央値は「平均的なPMの年収」を表しているだけではない、ということです。目安としては、「経験の型で通る市場」と「高い要求水準に応える市場」の境目に近い位置にあると個人的には読んでいます。

誤解がないように申し上げると、どちらが良い・悪いという話ではありません。ワークライフバランスや年齢の門戸を重視するなら、難易度2の業態は合理的な選択です。会社名や年収の数字ではなく、PMとしてどこに介在価値を出したいかで選ぶ。職種で選ばず、構造で選ぶ、ということです。

4. 求人票が求めているスキルの構成

次に、当社の取扱PM求人のうち、各スキルに言及している求人の割合です。

スキル言及率位置づけ
AI活用・LLM・DX53%突出。半数を超える
PMO・複数案件統括21.7%大規模・複数案件の統括ニーズが安定継続
ベンダーコントロール16.5%SI系案件を中心に一定の需要
アジャイル/スクラム13%前提条件化しており、差別化要素ではない
英語・グローバルPM5.2%オフショア・グローバル案件で局所的

AI活用の言及率は、2位のPMO・複数案件統括の約2.4倍です。僕がずっと申し上げている「職種が溶ける」という話が、求人票の文面にそのまま表れていると思うわけです。

ただし、ここは誠実に区別しておきます。

このデータで言えることこのデータで言えないこと
求人票の半数以上がAI活用に触れているAI経験を必須にしている求人の割合(言及率と必須率は別物です)
現時点ではAI活用への言及が他のスキルより突出している言及率が過去からどれだけ伸びたか(今回は時系列を示していません)
アジャイル/スクラムは言及率13%で、前提条件化しているAIに言及した求人ほど年収が高いかどうか

また、資質は軸を分けて考えるのがおすすめです。

求人票で差がついて見えるのは技術スキルの軸です。ただ、面接で最後に効いてくる人間力の軸は、このデータの外側にあります。スキルという水平的成長だけでなく、人としての器という垂直的成長を、自分の言葉で語れるかどうかだと考えています。

5. 45歳以上97.3%とリモート7%が示すもの

年齢と働き方の条件も、対比で見てみます。

年齢:45歳以上も応募可働き方:リモートへの言及
97.3%7%
年齢条件が明記された取扱求人のうちの割合取扱PM求人のうち、リモートに言及した割合
前回から横ばい。年齢で入口を閉じる求人はほぼない求人票でリモートに触れる求人は1割に届かない

「PMは40代で転職が難しくなる」という通念があります。ただ応募の入口に限って言えば、ほぼ開いています。

一方で、応募できることと選考を通ることは別の話です。年齢別の通過率は、このデータからは言えません。また、リモートの7%は「リモートに言及した割合」です。リモート不可の割合ではないことをご認識まで。

6. 求職者の関心は大きく波打っている

最後に、求職者側の動きです。PM検索接触指数(13週平均=100)の推移を見てみます。

週指数
W2755(13週の最低)
W31131(13週の最高)
W3376
W34〜W3593 → 108
W3889
W3976(前週−13pt)

13週のあいだに55〜131と、2倍以上の幅で動いています。直近の76はW33と同じ水準で、そのときは翌週から回復しました。

求人倍率と年収がほぼ動かないなかで、関心の指標だけが大きく上下しています。1週の下落を「市場の冷え込み」と読むのは早計です。

なお、この指数は当社メディアへの接触量です。PM転職市場全体の需要そのものではありません。

7. (結論) 昔→今→次に何が起こるのか

ここからの「次」は推定です。根拠とあわせて、あくまで山根の個人的な見解としてお読みください。

論点昔(13ヶ月前/13週前)今次(推定)と根拠
量有効求人倍率1.21倍1.18倍・新規2.06倍当面は横ばいが続く可能性が高い。年明け以降、1.17〜1.19倍の幅に収まっているため
年収中央値900万円900万円(帯は900〜925万円)中央値よりも、業態による上限の差が効いてくる。上限が900万円を超えるのは難易度4〜5の業態だけのため
中身(時系列データなし)AI言及53%AI活用は「加点」から「前提」に近づく。アジャイル/スクラムがすでに前提条件化した流れと同じ道をたどる可能性があるため
市場の温度を気にするよりも、自分がどの業態で、どの要求水準に応えるのかを決めるほうが、年収の着地には効いてくると考えています。

冒頭の「市場は冷えているんですか?」というご質問への僕の答えは、「冷えてはいません。ただ、同じPMという肩書きのままでは、見える景色が変わりつつあります」になります。過去の成功体験をそのまま語るだけでは、それがいつの間にか固定観念に変わってしまう。数字が落ち着いているときこそ、中身の変化を見ておきたいところです。

最後に

今回のデータで言えること今回のデータで言えないこと
全国の求人倍率と、当社取扱PM求人の年収はどちらも横ばいPMに限った求人倍率
求人票の半数以上がAI活用に言及しているAI言及と年収の因果関係・必須要件の割合
45歳以上の応募の入口はほぼ開いている年齢別の選考通過率

まだ説明したいことはあるのですが、長くなりすぎてしまうため、一旦ここで説明を終えたいと思います。

データ研究室では、この定点観測を今後も続けていきます。数字が動いたときに、その背景にある構造を一緒に読み解ければ幸いです。

※PM Questでは、ご自身がどの業態・どの年収帯で戦えるかを整理するところからご相談をお受けしています。お気軽にお声掛けください。

※本記事の数値は、PM Quest(株式会社ポテンシャライト)に蓄積された選考記録・市場観測データの集計に基づきます。個別の企業・候補者を特定できる情報は含みません。

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