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PM QUEST データ研究室 2026-09-14

PM転職の「お見送り理由」を分解したら、落ちる理由は平均1.6個だった — 当社の選考記録から

0. 「山根さん、正直、僕は何が足りなかったんですかね」

お見送りのご連絡をお伝えしたあと、この一言をいただくことが割とあります。

そして正直に申し上げると、僕はこの質問に、いつもきちんと答えられるわけではありません。企業側からいただく理由は、そのままお伝えするには生々しいことがあるからです。ここでは控えます、という言い方をせざるを得ない場面が、現実にあります。

ただ、個別には言えなくても、全体の傾向としてなら言えるはずです。そう思って、当社に蓄積された選考記録から、お見送り理由を項目別に集計してみました。今回はその集計値だけを根拠に書きます。

本記事の「PM」はプロジェクトマネージャー(PjM・PMO等)を指します。数字はすべて当社の選考記録の内部集計であり、市場全体の統計ではありません。企業が特定される情報や内部の集計規模は出さず、項目別の比率のみを公開します。

0-1. 数字の読み方(先に3点だけ)

  1. 誰の何の%か=当社経由でPM関連ポジションの選考に進み、企業側からお見送りとなったケースのうち、その理由が挙がった割合です。求職者アンケートでも、内定者の分析でもありません。
  2. 合計は100%を超えます。お見送り一つに対して理由が複数記載されるためです。
  3. 時点は2026年8月の断面のみです。過去との比較や時系列の増減は、今回の集計では取っていません。「昔よりカルチャーが厳しくなった」といった話は、この記事では一切できません。

1. 結論から言うと

結論から申し上げると、3点です。

  1. お見送り理由の1位は「経験不足」で53%。ここは想定どおりです。
  2. ただし2位「年齢・将来性への懸念」37%、3位「カルチャー・志向のミスマッチ」33%職務スキルの話ではない理由が上位に並びます。
  3. そして理由の合計は164%。お見送り一つあたり平均1.6個の理由が挙がっています。一箇所を直せば通る、という構造にはなっていません。

2. お見送り理由の分布

お見送り理由挙がった割合
経験不足(技術・開発・特定領域)53%
年齢・将来性への懸念37%
カルチャー・志向のミスマッチ33%
年収・条件の乖離15%
出社・転居・リモート条件12%
説明が冗長・コミュニケーション7%
経験の分散・専門性が見えない5%
スピード感・エネルギー不足2%

この8項目を、山根なりに資質の軸で3つに分離して捉えています。ここを混ぜて語ると、打ち手が濁ります。

該当する理由動かし方
層A職種経験・技術スキル経験不足 53% / 経験の分散 5%経歴の設計と語り方で動く
層B人物・方向性(人間力)年齢・将来性 37% / カルチャー 33% / 説明力 7% / エネルギー 2%面接の場で動く/相手選びで動く
層C条件年収 15% / 出社・転居 12%応募前に決着している
層Cは合計27%。面接対策をどれだけ積んでも1ミリも動かない領域が、これだけの比率で存在します。ここを最初に潰すのが、いちばん費用対効果が高いと個人的には考えています。

3. 一般通念の反転 —「スキルを足せば通る」は、半分しか正しくない

皆さま、こんな経験ありませんか。お見送りが続くと、資格を取ろうとか、技術書を読もうとか、とにかく「自分に何かを足す」方向に走ってしまう。気持ちはものすごく分かります。僕も同じことをすると思います。

ただ、実はそうではない、というのがこの分布の示すところです。

よくある通念データが示していること
落ちる=スキルが足りない経験不足は53%。ただし年齢37%・カルチャー33%が並走する
面接での話し方が下手だから落ちる説明力起因は7%。話し方より中身と方向性で決まっている
条件は最後に調整すればいい年収15%+勤務条件12%。調整の前に選考が終わっている
いろいろ経験しているほど強い「経験の分散・専門性が見えない」が5%。幅は、示し方を誤ると弱みになる
落ちた原因は1つ理由の合計164%。平均1.6個が重なっている

誤解がないように申し上げると、ここで言えるのは「どの理由が、どのくらいの頻度で記録に挙がったか」だけです。理由の記載は企業側の言語化に依存します。たとえば「年齢・将来性への懸念」の中に、別の懸念が丸められて入っている可能性は十分あります。因果までは断定できません。

4. 「見られている観点」と重ねると、入口と出口のズレが見える

同じ選考記録から、企業側が評価の観点として挙げた項目の分布も取っています。こちらは「お見送りになったケース」ではなく「選考で重視項目が記録されたケース」を対象にした比率です。対象の性質が違うので、二つの比率を単純に引き算することはできません。それでも、並べると構造が見えます。

企業が見ている観点割合
マネジメント規模・PM経験の厚み32%
技術理解・開発経験の深さ22%
上流工程・要件定義の経験18%
コミュニケーション・説明力15%
業界・ドメイン知識8%
人柄・カルチャーマッチ8%
自走力・スピード感5%

4-1. マネジメントは入場券、技術は当落線

見る観点の1位は「マネジメント規模・PM経験の厚み」で32%。ところが落ちる理由の1位は「技術・開発・特定領域の経験不足53%で、観点側の技術理解は22%と2位です。

つまりマネジメント経験の厚みは入場券、技術理解は当落線という構造になっている、と個人的には捉えています。PMという職種でありながら、中身の解像度で決着している。「人を回せること」と「中身が分かること」の両方を同時に求められている、ということです。

4-2. カルチャーは、加点8%・減点33%の非対称

項目見る観点として落ちる理由として
人柄・カルチャーマッチ8%33%
コミュニケーション・説明力15%7%
カルチャーは加点されにくく、減点されやすい。合わないと判定されたときだけ表に出てきます。逆に説明力は、落とす理由になりにくく、通す理由になりやすい。準備時間を説明の練習に全部溶かすのは、配分としてもったいないと思うわけです。

これも仮説を一つだけ置いておきます。説明が下手なだけで落ちるのではなく、説明が下手だと「経験が薄く見える」のではないか。つまり説明力の弱さが、53%の経験不足判定に化けている可能性がある。ここはデータからは確認できません。あくまで僕の体感値です。

5. では、どの順番で潰すか

分布をそのまま作業に落とすと、こうなります。順番には理由があります。1と2は面接の前にしか動かせないもの、3〜5は面接の場で動くもの。動かせないものから先に片付ける、というだけの話です。

  1. 【条件の言語化】層C・27%:年収の下限、出社頻度の上限、転居の可否を、数字で1行ずつ書き出す。曖昧なまま進むと、面接の出来と関係のないところで終わります。エージェントを使っているなら、面接前に共有してください。
  2. 【技術の当落線】53%:直近で関わった開発から「自分が技術判断に踏み込んだ場面」を2つ、意思決定の中身まで書き出す。規模ではなく踏み込みの深さを語る。
  3. 【将来性の翻訳】37%:年齢・将来性への懸念は、裏返せば「この先も伸びるか」を見られています。直近1年で新しく身につけたものを1つ、具体的に言えるようにする。実績の量ではなく変化率を出す。
  4. 【カルチャーの照合】33%:その組織が大事にしていそうな言葉を3つ拾い、自分の実体験と接続できるかを確認する。接続できないなら、無理に合わせず受けない判断もあってよいと思っています。
  5. 【幅の畳み方】5%:経験を全部並べず、「軸1つ+それを補強する経験2つ」に畳んでから話す。観点の1位がマネジメント規模の厚み(32%)である以上、最初に置くべきは深さと範囲です。

好きな飲食店をイメージしていただきたいのですが、味が気に入るかどうかを議論する前に、そもそも店が予算外だったり、通えない距離だったりしたら、その議論に意味はありません。条件は、味見の前に確認するものです。1を先頭に置いたのは、そういう理由です。

6. このデータから言えないこと

誠実に線を引いておきます。今回の集計から言えないのは、以下です。

言えるのは、複数理由が重なって落ちていること職務スキル以外の軸が想像より厚いことカルチャーが観点8%・理由33%の非対称であること。この3点です。

7.(結論)

最後に。PMは同じ肩書きでも中身が大きく異なる職種です。だからこそ、落ちた理由を「自分が足りなかった」の一言で回収してしまうと、次の一手を間違えます。分布で見れば、打ち手は分解できます。

あくまで当社に蓄積された選考記録からの集計であり、市場全体を代表するものではありません。ただ、次の準備の優先順位を決める材料としては、十分に使える解像度だと思っています。

まだ書きたいことはあるのですが、長くなりすぎてしまうため、一旦ここで終えたいと思います。今後もPM Questのデータ研究室として、市場の観測結果をアウトプットしていきます。では、今日もがんばりましょう。

※本記事の数値は、PM Quest(株式会社ポテンシャライト)に蓄積された選考記録・市場観測データの集計に基づきます。個別の企業・候補者を特定できる情報は含みません。

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