PM QUEST データ研究室 2026-09-14
お見送りのご連絡をお伝えしたあと、この一言をいただくことが割とあります。
そして正直に申し上げると、僕はこの質問に、いつもきちんと答えられるわけではありません。企業側からいただく理由は、そのままお伝えするには生々しいことがあるからです。ここでは控えます、という言い方をせざるを得ない場面が、現実にあります。
ただ、個別には言えなくても、全体の傾向としてなら言えるはずです。そう思って、当社に蓄積された選考記録から、お見送り理由を項目別に集計してみました。今回はその集計値だけを根拠に書きます。
結論から申し上げると、3点です。
| お見送り理由 | 挙がった割合 |
|---|---|
| 経験不足(技術・開発・特定領域) | 53% |
| 年齢・将来性への懸念 | 37% |
| カルチャー・志向のミスマッチ | 33% |
| 年収・条件の乖離 | 15% |
| 出社・転居・リモート条件 | 12% |
| 説明が冗長・コミュニケーション | 7% |
| 経験の分散・専門性が見えない | 5% |
| スピード感・エネルギー不足 | 2% |
この8項目を、山根なりに資質の軸で3つに分離して捉えています。ここを混ぜて語ると、打ち手が濁ります。
| 層 | 軸 | 該当する理由 | 動かし方 |
|---|---|---|---|
| 層A | 職種経験・技術スキル | 経験不足 53% / 経験の分散 5% | 経歴の設計と語り方で動く |
| 層B | 人物・方向性(人間力) | 年齢・将来性 37% / カルチャー 33% / 説明力 7% / エネルギー 2% | 面接の場で動く/相手選びで動く |
| 層C | 条件 | 年収 15% / 出社・転居 12% | 応募前に決着している |
皆さま、こんな経験ありませんか。お見送りが続くと、資格を取ろうとか、技術書を読もうとか、とにかく「自分に何かを足す」方向に走ってしまう。気持ちはものすごく分かります。僕も同じことをすると思います。
ただ、実はそうではない、というのがこの分布の示すところです。
| よくある通念 | データが示していること |
|---|---|
| 落ちる=スキルが足りない | 経験不足は53%。ただし年齢37%・カルチャー33%が並走する |
| 面接での話し方が下手だから落ちる | 説明力起因は7%。話し方より中身と方向性で決まっている |
| 条件は最後に調整すればいい | 年収15%+勤務条件12%。調整の前に選考が終わっている |
| いろいろ経験しているほど強い | 「経験の分散・専門性が見えない」が5%。幅は、示し方を誤ると弱みになる |
| 落ちた原因は1つ | 理由の合計164%。平均1.6個が重なっている |
誤解がないように申し上げると、ここで言えるのは「どの理由が、どのくらいの頻度で記録に挙がったか」だけです。理由の記載は企業側の言語化に依存します。たとえば「年齢・将来性への懸念」の中に、別の懸念が丸められて入っている可能性は十分あります。因果までは断定できません。
同じ選考記録から、企業側が評価の観点として挙げた項目の分布も取っています。こちらは「お見送りになったケース」ではなく「選考で重視項目が記録されたケース」を対象にした比率です。対象の性質が違うので、二つの比率を単純に引き算することはできません。それでも、並べると構造が見えます。
| 企業が見ている観点 | 割合 |
|---|---|
| マネジメント規模・PM経験の厚み | 32% |
| 技術理解・開発経験の深さ | 22% |
| 上流工程・要件定義の経験 | 18% |
| コミュニケーション・説明力 | 15% |
| 業界・ドメイン知識 | 8% |
| 人柄・カルチャーマッチ | 8% |
| 自走力・スピード感 | 5% |
見る観点の1位は「マネジメント規模・PM経験の厚み」で32%。ところが落ちる理由の1位は「技術・開発・特定領域の経験不足」53%で、観点側の技術理解は22%と2位です。
つまりマネジメント経験の厚みは入場券、技術理解は当落線という構造になっている、と個人的には捉えています。PMという職種でありながら、中身の解像度で決着している。「人を回せること」と「中身が分かること」の両方を同時に求められている、ということです。
| 項目 | 見る観点として | 落ちる理由として |
|---|---|---|
| 人柄・カルチャーマッチ | 8% | 33% |
| コミュニケーション・説明力 | 15% | 7% |
これも仮説を一つだけ置いておきます。説明が下手なだけで落ちるのではなく、説明が下手だと「経験が薄く見える」のではないか。つまり説明力の弱さが、53%の経験不足判定に化けている可能性がある。ここはデータからは確認できません。あくまで僕の体感値です。
分布をそのまま作業に落とすと、こうなります。順番には理由があります。1と2は面接の前にしか動かせないもの、3〜5は面接の場で動くもの。動かせないものから先に片付ける、というだけの話です。
好きな飲食店をイメージしていただきたいのですが、味が気に入るかどうかを議論する前に、そもそも店が予算外だったり、通えない距離だったりしたら、その議論に意味はありません。条件は、味見の前に確認するものです。1を先頭に置いたのは、そういう理由です。
誠実に線を引いておきます。今回の集計から言えないのは、以下です。
言えるのは、複数理由が重なって落ちていること、職務スキル以外の軸が想像より厚いこと、カルチャーが観点8%・理由33%の非対称であること。この3点です。
最後に。PMは同じ肩書きでも中身が大きく異なる職種です。だからこそ、落ちた理由を「自分が足りなかった」の一言で回収してしまうと、次の一手を間違えます。分布で見れば、打ち手は分解できます。
あくまで当社に蓄積された選考記録からの集計であり、市場全体を代表するものではありません。ただ、次の準備の優先順位を決める材料としては、十分に使える解像度だと思っています。
まだ書きたいことはあるのですが、長くなりすぎてしまうため、一旦ここで終えたいと思います。今後もPM Questのデータ研究室として、市場の観測結果をアウトプットしていきます。では、今日もがんばりましょう。
※本記事の数値は、PM Quest(株式会社ポテンシャライト)に蓄積された選考記録・市場観測データの集計に基づきます。個別の企業・候補者を特定できる情報は含みません。